夢を見て、忘れていた昔のことを思い出した。
イギリスにいた中学時代のある日、校内ハウス対抗サッカーでゴールキーパーをしていた時のこと。(運動神経のにぶい國領がスポーツの話題というのは珍しいのだが、サッカーについては学校の対外試合には一応代表で連れていって貰えるレベルだった―同学年に天才的にうまいのがいたので、いつも控えだったのだが―。ちなみにラグビーは体格的にどうにもならず、クリケットは日本で覚えた野球の癖が邪魔になった)。
ペナルティエリア内から強烈なシュートを打たれ、枠内上方にきたと判断して二歩ばかり後退してからジャンプした。ほぼ真上やや左、「大丈夫、とれないがはじける...」と思った瞬間に横から味方の足が出てきてコースが変わった...げ...。浮き上がりながら、コースを読み直す。方向は変わらず、同じようなところで枠にきそうだったが、球速が落ち、かつループになる。「まずい。枠にくるまでに体が沈む...」。案の上、体が落ち始めた時にはまだボールは到達していなかった。救いのない感覚。ふぇぇ。
夢の方はもっとナンセンスな展開をしながら、とにかく僕にその時の「ふぇぇ」を思い出させるところで終わった。どうしてそんな夢を見たのかは当然不明で、これから「ふぇぇ」と思う局面がくることを暗示しているのかもしれないし(やだなぁ)、既に日々直面している「ふぇぇ」の連続が夢に出てきただけかもしれない。
希望的な観測をいうと、どなたかが、大丈夫だった経験を思い出させて励ましてくれているのかしらとも思う。サッカーの場面では、ボールが到達したときに右手中指がかろうじて、ボール軌道に残り、指関節の筋肉で押したら、球速を失っていたボールが30センチほど浮いてくれて、クロスバーの角をこすりながら上を超えてくれた。
夢のおかげで手の指先から、足の小指まで全部の関節を伸ばして宙に留まろうとした感覚まで思い出した。スポーツは勝った時の充実感だけでなく、生きていると必ずめぐり合う、予想外の展開や、挫折や、リカバリを若いうちから体得させてくれるから良いのだろうと思う。あのときのささやかな挫折感とささやかな達成感が、後からきたもっと大きな挫折やリカバリにつながったように思う。
(掲載日:2011/10/27)