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2011.05.09

節電プロジェクト始動!|國領二郎(総合政策学部長)

 電力供給に不安がある中で夏が近づきつつある。まだどんな展開になるのか、読めない部分があるのだが、既に政府からは大学を含む大口利用者に大幅な電力使用量のカットの要請が出されている。そんな要請があってもなくてもする貢献はしないといけない。

 問題はその方法で、大雑把にいって二通りの考え方があるのだろうと思っている。ひとつは、キャンパス版計画停電のようなことを考えて、あらかじめシャットダウンするカリキュラム、行事や建物などを決めておく方式だ。早い話、今のうちに授業をやめて夏休み入りを繰り上げてしまう決定をすれば、電力使用量を確実に大幅に減らすことができる。

 しかし、この方式はどうしてもそうせざるを得ないところに追い込まれないかぎり(その可能性もある)採用したくない。「授業開始を遅らせたSFCなのになぜ夏休み繰り上げは嫌なの?」という疑問もありそうだが、新学期開始の時には、緊急事態下だからこそできる(なすべき)社会貢献活動に従事している学生諸君のこと、日本に来るのをためらっていた留学生のこと、計画停電でサーバやトイレも全く利用できない状況に陥ったこと、燃料不足でバスも大幅に減便になっていたこと、などを考えての緊急事態対応だった。今回は差し迫った身の危険の話ではない。涼しい夏なら普通に授業が出来る可能性もあるし、電力需給が緩和する可能性もあるし、何よりも、これはひょっとするとこれから十年単位で続く省エネルギー社会への挑戦の話だ。ここで単純に諦めてしまうのは、文理融合で問題発見解決を標榜しているSFCとしてはくやしすぎる。

 と、いうことで、採用したい今一つの考え方が、SFCの知的な能力とコミュニティとしての結束力を活かして、夏までに知的な活動を低下させずに、大幅な節電を果たす方式だ。

 この方式を成功させるための秘訣は「情報共有と自律的な取り組みの融合」だと思っている。つまり、キャンパスの全員で状況をリアルタイムに把握し、それぞれにキャンパスを救うための行動を起こしていただく方式だ。既にキャンパスのおおもとの電力消費量をリアルタイムに皆に「見える」仕組みづくりを始めている。これに加えてキャンパス各所でモニタリングをして、いまどこが省電力に貢献しているか、問題はどこか、などが見える状況の構築を考えている。首都圏の電力状況のモニタリングなどもして、本当に大変な日にはツイッターなどで刻々状況を共有すれば、各所で自発的な動きが起こって不要な機器のスイッチオフなどをしてくれるのではないか期待している。多くの学部が同居していて、臨機応変の動きをするのが難しいキャンパスではとれない方針だろうと思う(なので他のキャンパスも同様のことをしようと呼びかけるつもりは-少なくとも今年は-ない)が、日頃一体的運営をしてきた、総合政策、環境情報学部、政策・メディア研究科なら、天候や、発電所の状況などを見計らいながらかじ取りすることができるはずだ。

 方針共有(この文章もそうだが)も大切だと思っている。みなさんにキャンパスとしての考え方を共有して、研究成果をフルに活用した節電対策を考えて実施してほしいと願っているし、いろいろな提案に耳を傾けたい。技術的なソリューションもあれば、自発的取り組みの組織化などの社会的ソリューションもあるのだろうと思う。

 それでもだめ、ということも「想定」しておかなければいけなくて、酷暑の日に、おおもとのコンセントを抜く(空調装置の中央スイッチを切る...)といった苦渋の決断が行われ(するの僕かなぁ、やだなぁ、汗)、突然、授業継続できなくなるような事態もありえないとはいえない。その場合でも熱中症にかかる学生がでないように、空調の効いた部屋を用意しておこうと思う。また、そんな時に学生が成績などでの不利にならないように配慮しないといけないとも思っている。もちろんそんな事態にならないように、その時が迫っている時には皆に告知して行動を促したい。誰が、どれくらい貢献したかも見える化できれば、救われた時のヒーローが誰かも分かる。

 本件、災いを原動力にして大きく前進するチャンスだと考えたい。エネルギー消費を抑えながら、豊かな社会を作る課題は、これから世界が解かないといけない大問題で、せっぱ詰まった形でも、そこにイノベーションを起こすことに成功すれば、それが世界に貢献することにつながる。

 公序良俗に反しない範囲でキャンパスのドレスコードも緩めて、学部長も軽装(アロハ?)でうろつくことを赦していただくことにしながらでも、知的な生産は落とさないように頑張っていきたいと思うので、みなさんもよろしくお願いします。

(掲載日:2011/05/09)