ぼくは生まれて4カ月、重さ4キロの柴犬。
動くものを見ると追いかけずにはいられない。ぼくの目の前を行ったり来たりする主人のスリッパとソックスは、追いつくと逃げるのでまた追いかける、怒った主人がぼくを追いかけはじめると楽しい。これまではすぐに捕まったが、最近はすぐには捕まらない、ぼくの走り抜ける隙間に主人は入ってこられないんだ。
椅子に座ってテレビに夢中になっている主人を呼ぶのは大変だったが、いまは主人の手首や腕に軽々ととびつくことができるのですぐに気づいてくれるようになった。でも「痛い」と言われ、ぼくはなぜか怒られる。この前は、主人の椅子にようやく這い上がることができ、得意になって立ちあがったら、机の上には今まで見たこともないおいしそうなものがたくさんあった。途端に「大変なことになった」とあわてた主人に椅子から降ろされた。
近くの公園へのお散歩も、今日初めて自分の足で往復できるようになった。そこには茶、黒、白さまざまな色の犬がいて、その大きさといったらぼくを一口で飲み込んでしまうくらいのがたくさんいる。ぼくは主人の足の陰からそっと覗くようにしている。時にはどんどん近付いてくるのがいて、ぼくが怖くなって大きな声を出したりすると、なぜか主人たちは笑っている。
おもちゃのようなやさしいお姉さん犬を連れて歩いているおじさんが、ぼくの頭をなでながら「かわいいね」と言ってくれたのはよかったけど、「これ以上大きくなるな、このままでいろ!」とぼくにおまじないをかけようとした。ぼくはあわてて主人の後ろに隠れた。冗談じゃない、ぼくはもっと大きくなって強くなるんだ。
いつもおなかがすいて、おいしそうなものや遊びたいものが家の中のどこにあるかだいたいわかってきた。ぼくはいつもチャンスを狙っている。不安なときは抱っこしてほしいけど、あまりこれまでのように抱っこしてほしくない、だってぼくは一人でいられるようになってきたのだ。
あしたはお休みになったと主人たちが話している。まだぼくは行ったことのない遠くの公園に自動車とやらで連れて行ってくれるそうだ。いろんなはじめてのことがちょっと怖いこともあるけど、ぼくはうれしくてしかたない。いつも留守番が長いから、主人のお休みがずっと続くといいのに。
遠く白いのが富士山だと言われ、今度は初日の出とやらを拝みに一緒に行くことになるらしい。たくさん食べて、寒さなんて気にしない、いろんな新しいことを経験して早く一人前になりたい。
(掲載日:2010/12/27)