11月7〜9日の間、慶應義塾創立150年記念式典関連の行事が続いた。7日の夜は、三田キャンパスで祝賀薪能「土蜘蛛‐入違之伝‐」が上演された。三田の中庭には特設舞台が作られ、篝火が焚かれる幻想的な雰囲気のなか、土蜘蛛の糸が乱れ飛んだりと、とても見応えのある能であった。夜は、オークラにて海外交流校代表者歓迎晩餐会に出席し、来賓の方々と懇談した。翌8日は、日吉キャンパスにて記念式典に参加することができた。当日は、生憎の小雨で式典会場の方々は、寒い中、透明なポンチョを来て参加されていた。ただ、式典が進行するとともに雲が切れ、明るくなり、天皇、皇后両陛下がお見えなると、なんと、小雨も止み、ますます空が明るくなった。「今後も、慶應義塾が国の内外で活躍する人材を数多く育て、送り出すことを期待しています」というお言葉で締めくくられ、会場を去られると、再び小雨が降ってきた。不思議な感じであった。夜は、帝国ホテルでの記念パーティがあり、数多くの社中の方々とお会いすることができた。9日の日曜日は、恒例の連合三田会大会が日吉キャンパスであり、式典のあと、記念館にて「歌舞伎祝いの舞素踊り「連獅子」」を見ることができた。これまた、伝統芸能のすばらしさに触れ、感激した次第である。11月7日に発行された記念切手シートと文明堂の焼きたて三笠山をお土産に帰路についた。
さて、お題の150年であるが、私も150年前に20歳前後であったなら築地鉄砲州にて福澤先生の蘭学塾の門を叩いていたかも知れない。しかし、私が興味があるのは、むしろ、これからの150年、どのような人間社会やテクノロジーの進化が起こるかである。
かつて、私がインタビューしたことがあるSingularity(特異点)論者のRay Kurzweil氏が言うように、「GNR革命(ゲノム工学、ナノテクノロジー、ロボット技術の融合革命)」によってあらゆる癌などが克服され、人間は永遠の命を得ることができるであろうか? また、彼は、「収穫加速の法則」と呼んで、情報をベースとするすべてのテクノロジーが指数関数的に成長すると主張している。電子工学、通信、DNA解読、脳スキャン、脳のリバースエンジニアリング、人間の知識の量と範囲、ナノテクノロジーなどあらゆる技術的な発展が、今後は指数関数的に伸びていくというのである。もう1つ興味深い点は、これまでのコンピューティングの進化や技術革新のインパクトが、我々が生活している「生活空間」や「行動様式」に影響を与えてきたのに対し、これからのインパクトが人間の体や脳の内、すなわち体内で行なわれている生命活動や知的活動と密接に関係して起きるであろうと予測している点である。
日本の大学では、あまりSingularityに関する議論は起きていないようだが、スタンフォード大学などは、SSS (The Singularity Summit at Stanford)を開催している。SFCの学部生たちも、一度このようなSingularityについて議論すべきであると思っている。
あなたは、being naturalを指向するか?enhanced humanを指向するか?
(掲載日:2008/11/14)