「看護学」の学会(学術会議)は、日本看護科学学会、日本看護学教育学会、日本がん看護学会など、厳密には看護の科学や現象を追求してきた歴史と実績をもち、学術団体として「学術会議」に承認され、登録されているものを指すと考えます。しかし、看護実践や看護学教育の実際には、「看護学」のみならず、看護の経験知や学際的な領域での知見を必要としています。そのため、私が日常で「看護に関する学会」と言うときには、「看護学」のみならず、広く「看護に関連する教育や実践」をテーマに、追求する方法・経過や結果・知見を検討する学術的な領域が含まれています。
私の所属する学会も多岐にわたっています。主な研究内容の面からみると、1つは、看護の教育・研究・実践を追求する看護師(含む保健師・助産師)が主な会員である学会(日本看護科学学会、日本看護学教育学会、日本がん看護学会、日本看護管理学会、日本看護研究学会、日本家族看護学会、日本慢性看護学会、日本老年看護学会など)、もう一つは、健康や疾病治療等の医学・医療を研究する学会で、会員のほとんどが医師で構成されている学会(日本排尿機能学会、日本老年泌尿器科学会、日本感染症学会、日本環境感染学会、日本女性心身医学会、日本臨床死生学会、日本ストレス学会など)です。
これらの学会への私の参加方法は、学会の結成当初から理事や評議員として学会活動してきたもの、途中から加入して評議員や論文の査読委員として学会活動を支えてきたもの、研究成果を発表または学術集会に参加して新しい知見に接する機会を得ているもの、学会の年会費を払って間接的に学会活動を支えているものなど、多様です。
私が、最近参加した学会で強く関心を引かれた研究の一つに、第14回日本排尿機能学会の「蓄尿・排尿に関する機能的脳画像: Functional Brain Imaging」の報告があります。この報告への関心は、私の研究テーマが「糖尿病性膀胱症患者の排尿」であることとも関連しているためと思われますが、近年の「機能的脳画像」の発展にはめざましいものがあります。
これまでも「蓄尿・排尿機能(尿を膀胱内に溜めておいたり、ある量がたまったら排泄できる機能)」は、膀胱・尿道などの下部尿路機能、末梢の神経筋機構、脊髄、そして上位中枢の調節により行われていることは、かなり明らかにはされてきていましたが、MRI(磁気共鳴装置)やPET(positron emission tomography)を用いた研究により、蓄尿・排尿に伴う各脳部位の役割を画像に捉えることができるようになってきたことは、画期的なことです。これら研究成果が、「パーキンソン病、認知症、脳血管障害患者の排尿問題の原因を解明し、適切な対応策を考えられる日もそう遠くないのでは・・」と期待することができ、うれしく思いました。
看護や医療を取り巻く環境は、急速に変化してきています。そのため、人々の健康への意識や情報の活用状況、進んだ医学や治療方法などを十分に理解して、看護教育や看護実践に応用していく必要性が高くなってきています。「次代の看護学や看護実践を担う先導者を教育する」ミッションを持つ看護医療学部としては、「看護学」の新しい知見を創出する教育・研究に真摯に取り組むとともに、関連分野の学会への参加や、共同研究をしていくことも、必要不可欠であることを、再三にわたって強く認識している昨日・今日です。
(掲載日:2008/12/13)