本日づけで、総合政策学部長に就任しました。はしかのため全塾1週間休講の措置が取られた最後の日で、SFCには学生の姿がありません。新学部長の就任を示唆するような出来事は何もないのです。
人生の節目となるような日に何もなかったという経験は、私にとってこれが初めてではありません。学園紛争で荒れる某私立中学から慶應義塾高等学校へ進んだときには、卒業式らしい卒業式がありませんでした。3年後に塾高から慶應義塾大学法学部政治学科へ進学した際は、大学がスト中ロックアウト中であったために入学式がなし。2年後アメリカのジョージタウン大学へ留学し慶應へ戻らなかったので、慶應の卒業式がなし。(この3月と4月、学部長代行として、初めて塾の卒業式・入学式に参列しました)。アメリカから戻って9月に入社したソニーでは、入社の式典がなし。そして自分が学部長になった日には、学生諸君がいなかった。学部長の仕事そのものも、代行としてしばらくやっていましたから、別に新しいこともなし。ただ "代行" の2文字が取れただけです。
しかし来週になれば、授業は従前どおり平常に行われているでしょう。朝になると本館前にバスが到着しはじめ、静かだったSFCが急ににぎやかになる。午前中の授業が滞りなく進んで、昼時になると学生食堂や生協がごった返す。日が暮れるころ、キャンパスはようやく静かになり、それでもあちこちの教室やメディアセンターで、授業、部活動、グループワーク、そして会議が続いている。やがて夜のとばりが降り、SFCはつかの間の眠りにつく。
そんな当たり前の日常が続くことが、SFCのコミュニティーにとって大事であることを、今回の休講措置は私たちにほんの少し感じさせました。もしこのまま、SFCでの活動が一切再開されなかったら。このキャンパスにやがて雑草がボウボウと生い茂り、建物が朽ち果てて廃墟になったら――皆さんはどうしますか?
ほとんど誰も気づかないまま就任した新学部長のもと、SFCでの教育・研究が日々変わることなく活発に行われ、その成果が世に問われ、卒業生が巣立ち、新入生が到着する。そして時が経つと、誰も気づかぬまま、学部長がいなくなっていた。そんな風でありたいと、怠け者の新学部長は願っています。
(掲載日:2007/06/01)
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