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2007.02.27

若かりし頃の失敗|大西祥平(健康マネジメント研究科委員長)

このタイトルの内容を考えていると、自分の人生は失敗と反省の繰り返しだなと改めて感じています。取り立ててこれが大失敗だと挙げることができないほど、枚挙に遑がないほどであることは事実です。その中で敢えて選びました。それは医師の奢りです。

私が医師として活動し始めた頃のことです。新米でなにも解らないはずの私は何故か自信あふれた高慢な態度に溢れていました。医師と患者さんとの関係は非常にナーバスなものであるにも関わらず弱者の理解にきわめて乏しい態度を取っていました。患者さんはこの若い医師に非常な信頼を寄せていただいたことも私の態度を助長させていた、有頂天になっていたのも要因でした。医者はよく世間知らずだといわれることはもっともです。若い頃から先生と云われ、「大西さん」とさん付けで呼ばれることへの違和感を感じる程でした。今思えば恥ずかしい限りです。この私の態度によりどれだけ多くの患者さんおよびご家族がつらい思いをされていたのかを考えると本当に穴にでも入りたい気分となります。

この私の態度に対して冷水を浴びせたのは一人の医師でした。私が33歳の時ですが、循環器の医者として救急医療を一生懸命やっていたときでした。突然高熱に襲われ一週間40度近くの発熱が続きました。異常な疲労感とともにでした。やっと熱が下がったので心臓カテーテル検査のために病院に行きましたが、心配なため血液検査をしたところ急性肝炎であることがわかりそのまま入院となりました。医者から患者さんの立場になったわけです。その時に私の担当となっていただいた若い医師が私の若い頃と同じだったのです。「急性肝炎ですね。このタイプは慢性化する可能性が高いので・・・・・」と云われました。ベッドに寝ている私を見下ろすようにです。呆然としました。医師の一言一言が心にぐさっと突き刺さり、非常な不安感に襲われたのでした。そして同時にあーそうだった、私自身も若い医師の時に同じことをしていたのだとその時初めて感じました。

数ヶ月して退院しましたが、その時から私自身は反省し自らを改めるように努力をしています。患者さんと同じ目線の位置で話をすることを基本としてです。しかし、まだまだ不十分ではあり、反省の毎日であることには今も変わりはありません。

(掲載日:2007/02/27)

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