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2005.12.21

塾創立150年記念事業コアコンセプト作成にみた我が塾のスマートさ|吉野肇一(健康マネジメント研究科委員長)

今回のテーマも,「塾150年」とは,前回同様,硬い硬い。村井さんが常任理事になってから硬いテーマが2回続くのは,何かわけでもあるのだろうか? でも僕としては,このテーマに沿った,日記にとどめたい硬いが良い話題をたまたま持っていたのでちょうど良かった。

このことは塾内外で多くの人が知っていることではない。ただし,少なくとも「創立150年記念事業準備委員会」と「福澤研究センタ-」構成員にはe-メールで連絡が行われたことである。僕としては,コアコンセプト作成にあたってきわめて重大な局面で,このことが関係する各位の見事としかいえないスマートさで解決されたことに,万来の拍手を惜しまない。

本2005年7月に執行部から出された「創立150年記念事業案(案)」には,いわばコアコンセプトとして,次のような語句があった:

「『独立自尊』は今後も普遍の精神として‥‥」

これに対して,塾福澤研究センタ-所長 小室正紀経済学部教授より次のような意見が出された:

福澤は,「精神」の歴史性を主張した思想家であり,「普遍の精神」というのは福澤が論駁した対象である。「修身要領」には「徳教は人文の進歩と共に変化するの約束にして,‥‥」とある。詳しくは『文明論之概略』参照。したがって「普遍」という言葉をつかうのは,福澤の思想を理解していないという誤解を招く。(原文のまま)

この他にも貴重な意見が小室所長から出されたが,ここでは省略する。

上記二者間には,明らかに大きな違いがある。僕はこのことは150年事業を推進するにあたって本質的なことであり,どのような経過をたどるかに注目した。そのため,当時,三田で開催された本事業説明会にもわざわざ出かけたほどである。しかし,本件に関する議論は一切なく,また,他の諸会議でもされないうちに日が経っていった。

そして執行部から出された最終的なものは,塾員・塾内教職員等に配布された『未来への先導』という名の記念事業趣意書・募金のご案内という小冊子になった。僕はそこに,上記の指摘が勘案されているのをみて,これぞ,塾の良心そして誰にも傷をつけずにものごとを遂行するスマートさを垣間見た。

蛇足(文字どおり): 実は僕も漠然とではあるが,「『独立自尊』は普遍の精神・・・」として捉えていた。そして今回,このような経緯でこの4文字成句についての福澤先生の考え方を知り,先生の偉大さに改めて感嘆した。

更なる蛇足: 「独立自尊」の精神が不要になるような世の中になれば,塾の存在価値が低下することにもなろうが,ヒトの世が続く限り,そのようなことはあるまい。(了)

(掲載日:2005/12/21)

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