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2004.10.07

努力|吉野肇一(看護医療学部長)

編集者から,「今回はフリーテーマで」と来ました。が,どっこい,そうは行きませんでした。つまり,続けて読むと,「一点だけ、夏休みも終わり新学期を迎えますので、学生に気を引き締めてもらうような内容でお願いできればと存じます。」とあるんです。『おかしら日記』では,1回にそう何点も書くわけがないので,「フリー」とは名ばかりでした。ただし,編集者の気遣いは分かります。全くの『フリー』だと,何が書かれるか不安ですし,何かチップを与えないとなかなか書き出さないという危惧がありますよね。

でも,『学生に気を引き締めてもらうような内容』なんて書けるものですかね? そのようなものを見たいものですし,書けたら天才級の才能でしょう。

そもそもこの手のエッセイで,学生のためになるようなことがあるでしょうか? これは,色々なときのスピーチとか,いわゆる『偉人伝』にもいえると思いますが,学生のためになる内容はたくさんあると思います。しかし,それを学生が消化・吸収し,有効なエネルギーとして活用することは,僕自分の経験から先ずないと思わざるを得ません。それは,書き手・話し手と受け手である学生との,立場・年齢・性・人生経験等が,質・量ともに全く異なることによる価値観の相違から来ることと思います。

でも時として,上記のエッセイ,スピーチ等が,胸に刺さることがありますね。これは,その話題に関して,かつて努力したか,今,努力している人に起こることだと思います。僕はいつも,『努力をしても良運が付くとは限らないが,努力をしなければ良運は逃げていく』と考えています(その割に努力してない?:陰の声)。努力に関して,その方法は人様々ですが,齢を重ねるほどに,質はともかくとして量は増えます。ですから,聴衆中のしたり顔・うなずき人の頻度は,年齢に相関すると,僕は見ています。これをゴルフで言えば,下手なときに何のことか全く分からなかった教科書的アドバイスが,ずっと後に腕を上げた後で初めて,「あー,こういうことだったんだ!」と実感し,喜びに浸ることに似ています。この喜びとて,常日頃の熱心な練習なくしてはないのです。

肝心なことは,個々人の努力によってのみ,それぞれの人生がより良いものとなり得ることを,常に再確認する姿勢だと思います。なぜなら,いわゆる大成功には,『素質・努力・良運』の3因子が必要であり,この中で僕達ができるのは,『努力』だけだからです。お互いに努力しましょう。

少しは,気が引き締まったでしょうか? 天才は遠いレベルでした。(了)

(掲載日:2004/10/07)

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