MENU
Magazine
2004.11.04

人の性(さが)|吉野肇一(看護医療学部長)

本誌編集者より,「今回は、10月16日に開催されたホームカミングデイを受けて、先生にとって思い出深い知人、恩師にまつわるお話をご紹介いただきたく思います。」というリクエストを頂いた。

このような依頼は,結婚披露宴とか同窓会総会時に,係の方から言われることは多く,その都度,無難にこなしてきたが,このような文面として残るような機会は初めてで,僕としては意外に書きにくい。それは,よく考えてみると,このような対象,とくにポジティブイメージを持った人がきわめて少ないこと,ある人をほめるとそれに当たらなかった人を気の毒に思うことなどによることが分かった。つまり,結婚披露宴とか同窓会総会時とかでは誇張を効かせて,その場の雰囲気を高揚させることが第一義的で,今の僕のおかれた状況とは大きく異なるのだ。

でも,このようなシチュエーションで,思い出深い知人、恩師にまつわるお話をとうとうとされている方を見受けるが,前回,この『おかしら日記』に「努力」という地味な題で載せていただいたなかの「偉人伝」同様,どうも僕にはピンと来ない。

逆に,ネガティブイメージのこのような話というと,飲兵衛,時間にルーズ,下手な手術,すごく細かいことだけ気付く,などなどに相当する対象人はたくさんいるものの,それを詳述すると個人が特定可能となってしまうので書くことは出来ない。でも,このようにネガティブイメージの方が思い付きやすいことこそ人の性(さが)なのではなかろうか。そして,「思い出深い知人、恩師にまつわるお話」は,きわめて幸運に恵まれた人の特権か,あるいは,そういうことを堂々と出来る能力に恵まれた人に与えられたこれも特権ではないだろうか。

ということで今回も,与えられてテーマに対して斜めに構えたような文体になってしまった。でも,このように斜めに構えることができると人生の楽しさが倍加するような気もしている咋今である。次回は何とか,正面に構えたい。

最後に,今回の新潟中越地震にわが看護医療学部からもボランティア学生が現地へ行ったようで,とても心強い。(了)

(掲載日:2004/11/04)

→アーカイブ