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2005.03.25

9月卒業生|徳田英幸(政策・メディア研究科委員長)

従来の大学では、卒業式という言葉は3月を意味する。SFCでは、実は、入学式と卒業式とは年2回行われており、3月と9月を意味する。3月の学部卒業式は日吉記念館、大学院の学位授与式は三田西校舎ホールで行われる。

SFCの卒業式でもっとも規模の小さかったのは、9月入学した1期生たちの卒業式である。当時、私が9月入学生たちの情報処理を担当した経緯もありいろいろな思い出がある。海外からの帰国組みではあったが、日本語はもちろん問題なく話せた。しかし、学期末試験の答案用紙を英語で書いても良いと言ったところ、数名が英語で回答してきた。なんとCMU時代よく見慣れたすごーい字体である。思考と書くスタイルは、英語の方が慣れていたのであろう。当時、先輩もおらず、周りの多くは4月入学生であり、いわばマイノリティであった9月入学生は、よく頑張っていたと思う。卒業後の進路に関しても、大学院へ進学した人と就職した人がいたが、就職組みは結構大変であった。就職希望先の業界が放送業界で、なんと希望していた会社は9月採用という仕組みを持っていなかったのである。やむなく彼は意図的に卒業を半年遅らせたことをを覚えている。

当時、日本の就職に関する慣行はまだまだ遅れていて、学部を卒業してストレートに就職した人は"新卒"扱いで採用され、数ヶ月でもブランクの期間があった人は"中途採用"扱いになってしまう。このような事情もあって、SFCでは卒業のタイミングを延期できる枠組みを整備したのを覚えている。10年以上前の話である。今は、きっともうこのような3月卒業生と9月卒業生を差別するような会社は無くなっていると願っているが、どうであろうか?

逆に、ある外資系のコンサルティング会社などは、入社時期を選択させている。何が何でも4月から会社へ出勤するのではなく、自分が選択した時期から入社するのである。これはこれで、卒業から入社までのブランク期間をどう経済的に自立するかを決めなければいけない。このブランク期間を有効に過ごせるかどうかは、自分次第である。

9月卒業の1期生たちは、きっといろいろな分野で活躍してくれていると願っている。彼らのように新しい制度に挑戦し、新しいタイミングで社会に出ていった人たちは、社会を変革する運命を背負っている。卒業した彼らへ送った言葉は、なんのためらいもなく"自我作古"であった。大学改革を先導してきたSFCもまったく同様の宿命にある。

(掲載日:2005/03/25)

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