『未来を創る大学:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)挑戦の軌跡』がやっと、8月20日付で慶應義塾大学出版会から刊行された。SFCの「おかしら日記」としては、本書に触れないわけにはいくまい。
SFCは1990年春に開設され、新しい大学のあり方を示す挑戦として注目されつづけてきた。編者の孫福弘さんが「あとがき」で紹介しているように、「SFCの出現は日本の高等教育界にとって衝撃的なひとつの“事件”だった」のである。
節目の10年目に向けて、1998年にはIBMの椎名武雄会長を委員長にお願いして外部評価委員会を設置し、外部による点検・評価をしていただいた。しかし10年間をSFCの内側からも総括する必要があり、総括を踏まえて今後のさらなる挑戦の方向を示す責務がある。そう考えて、2002年秋から10年史刊行の準備にとりかかった。したがって、刊行まで2年かかったことになる。かかりすぎた責任は原稿提出が遅れた私にあり、したがって本書を宣伝しないわけにはいかない。
SFC(湘南藤沢キャンパス)は1990年春の創設以来、「未来を創る大学」を創造してきた。本書は当初予定の10年を超えて15年の軌跡を辿るとともに、次の15年に向けたグランド・デザインを語っている。SFCは常に前のめりに走りつづけているが、「未来を創る大学」実現という大目標を教職員と学生が共有してきたことが走りつづけることを可能にし、誇れる成果をもたらした。SFCの共通語に「アッケラカン」という表現があるが、成功も失敗も「アッケラカン」に語り、「未来を創る大学」でありつづける志が本書には溢れている。
それも当然である。SFCの事務長として、教授として、SFCの創設と発展に心血を注いだ孫福さんが急逝する直前まで、思いのたけを込めて編集したのが本書であるからだ。孫福さんのご冥福を祈りたい。そしてSFCメディアセンター事務長の村上篤太郎さんと孫福研究会の学生である安井元規君、環境情報学部教授の金安岩男さん、そして慶應義塾大学出版会の上村和馬さんにも感謝したい。村上さんと安井君は孫サンを補佐して、実質的な編集作業すべてを取り仕切ってくれた。金安教授は孫福さんが横浜市立大学CEOに就任することになった後、編集作業の最終局面を遺漏なきように目配りしていただいた。
在学生、卒業生、教職員などSFC関係者はもちろん、塾外の大学人、産業界や官界の方々にも、本書を手にとっていただきたい。そしてとくにこれからSFCを目指そうとする受験生やそのご父母にこそ読んでいただき、SFC進学の決意を固めてもらいたいと願っている。
(掲載日:2004/08/26)
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