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2004.05.27

おかしらリレートーク: 学生時代、出会いを大切にするべし|小島朋之(総合政策学部長)

出会いはいつでも、どこにでもあることだ。しかし、後から振り返るとき、人生を決めた出会いというのが誰にでもいくつかあるはずだ。そうした出会いの機会が多いのが、大学時代ではないだろうか。私自身にとっては、そうであった。

高校時代は柔道に明け暮れ、義塾の法学部にやっと入学したが、1年生のときは福岡という地方から出てきた学生には都会の色を身にまとった塾生には馴染めないままだった。授業にもさほど熱心に取り組まず、1年の終わりに授業料値上げ反対運動が起こり、学校封鎖で休講状態がつづいた。なぜかそのとき暇に任せて、指定教科書として購入していた本を読むことになった。読むうちに、簡潔な問題設定、明快な仮説提示、論理的な仮説検証の手続きと納得の結論に引き込まれ、一気に読了してしまった。その本が『中国共産党史研究』(慶應通信)であり、著者が後に16年にわたって塾長を務められた石川忠雄先生であった。もともと、生後一か月で上海に住み、敗戦直前の引揚者であり、中国への関心があったこともあり、中国問題を勉強してみようかという気持ちになった。

これだけであれば、そのまま卒業してもともとの希望であった新聞記者になっていたかもしれない。それを変えたのが、その後の石川先生との交流である。読了後、感想を書いて先生に手紙をだすと、すぐに先生から返信があり、ご自宅への訪問の誘いがあった。そして「面白い学生がいるから面倒をみるように」と言われた先生の研究室の大学院生に指導を受けるようになった。その大学院生が、後に法学部の学部長となられた山田辰雄先生であった。ゼミ生でもないのに石川先生、山田先生に折に触れて指導していただき、3年からは石川ゼミで直接の指導を受け、いまに至っている。

こういう出会いが学生時代にはある。しかし、その前提は学生からの一通の手紙に感応する教師の姿勢である。学生からのメールには、短くても必ず返信したいと自戒している。

(掲載日:2004/05/27)

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