SFCスピリッツ
大学の存在理由と科学
天野恵さん
株式会社リクルート テクノロジーマネジメント開発室 アソシエイト
2002年総合政策学部卒業
僕にとっては、化学式が言語なんだ。
地球上の全ての現象は、化学式で表せる。
だからポテトチップからアクリルアミドができることだって、当然じゃない。
と、私の目の前に座っていた某国立大学の教授は言いました。
産学連携、或いは技術移転、という言葉をメディアで見るようになってしばらく経ちましたが、その最も先端部分に私達の仕事はあります。大学が保有する知的財産、つまり研究者(先生方ですね)達の研究成果をもっと活発に資産として運用する事ができるのではないか、その活動を通して大学が独自に収入を得、また新たな研究費や研究者への報酬に当てることで研究機関として成長するという仕組み作りが、私達テクノロジーマネジメント開発室の仕事です。 具体的な業務は、大学から技術の開示を受け、その技術を私達が企業へ売り込みに行き、代理人として契約の交渉を行うというものです。
元々私は教育、学校に関する仕事をしたくて、入社後の3年間は大学などの広告営業をしていました。進路を選ぼうとする(或いは選ぼうともしない)高校生に、いかに学校の教育の面白さや特徴を伝えるか、が面白くてしょうがありませんでした。その後今の部署へ異動となり、これまで見ていたお客様と全く異なる側面を持つ大学の姿が見えてきました。研究機関としての大学の評価、研究者と企業の関係、さらに言えば科学と経済、世の中の関係。そこで冒頭の発言に戻るのですが、化学も物理もろくにやっていない私の知識はなんと偏った曖昧な発想で世の中を見ていたのかと驚きました。
ここでの経験を通して、大学の機能や仕組みについて考える自分の力に、より広く深い観点が増えることを実感しながらも、これまでにない新素材や、直せない病気の薬の種となる発明にウキウキしている毎日を送っています。
(掲載日:2007/07/25)