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2008.01.23

一コマまでの道のり

SFCスピリッツ

一コマまでの道のり

『雨の日は、何色?』(c)2007 Sachiyo Watanabeわたなべ さちよさん
アニメーション作家
1997年環境情報学部、1999年政策・メディア研究科修士課程

アニメーション作家と聞くと、「それってどんな職業?」「アニメーターとはどう違うの?」と思われる事と思う。普通、アニメーションは集団作業で作られる。監督がいて、脚本、演出、制作進行、作監、原画、動画、彩色、撮影、編集、、、それらを全て一人でやるのがアニメーション作家だ。画家や小説家のように、作品にまるごと自分の世界を投影できるところに、分業で絵を描くアニメーターにはない醍醐味を味わえる。けれど、だからこそ、難しい。

作業は緊張の連続だ。

まず、脚本や絵コンテの作業。アニメーションと言えば絵や動きだが、それは単なる化粧にすぎない。最も大切なのは、骨組みとしての物語作りだが、この作業は机に向かった分だけ結果がでるというものではない。ふとした思いつきが物語をまとめてくれることもあれば、何時間考えても駄目なこともある。完成度の予測がつかない分、怖い。

納得のいく物語や設定が出来た後は、作画や撮影、録音、編集作業に入る。

こちらは手を動かした分だけ捗るけれど、その分締め切りと戦いつつ、どこまでがんばれるかを粘る作業。胃を悪くする。最後は、もう永久に終わらないのではないかという絶望の縁に立ちながら、なんとか最終地点を決める。

仕事場に泊まり通しで作業をする事も珍しくない。座りっぱなしのあまり健康的ではない職業だが、自分の世界の中でキャラクター達が息づいている瞬間を、目にした時の喜びは何物にも代え難い。

私の場合、10年以上自分の方向性が決まらず、作品が作れない事で悩み続けた。ようやく2005年、2006年と、二年連続でNHKミニミニ映像大賞で受賞し、昨年はNHKで二回お仕事をさせて頂く運びとなった。ミニミニ映像大賞のプロモーション映像『雨の日は、何色?』とみんなのうたの『しあわせだいふく』である。

活動は、まだ始まったばかり。普段、イラストや動画の仕事をしながら、糊口を凌ぐ。一コマ一コマ模索は続く。

クロウアニメーション
http://www.crowanimation.com/

(掲載日:2008/01/23)