塩見明子さん
株式会社リリフル代表取締役
2006年 看護医療学部卒業
--現在、どんな仕事をされているのですか?
「病気でも、要介護でも、自宅で暮らしたい」という皆さまの願いを叶える会社を2014年2月に自分で立ち上げました。名前は「株式会社リリフル」といい、訪問看護・介護を行っています。
私たちは、在宅での療養を考える際真っ先に想起していただく会社をめざしており、そのため看護師だけではなく、介護士・リハビリ士(理学療法士、作業療法士)の3職種を採用し、それぞれの強みを活かし連携し合いながらサービスを提供しています。
たとえば、一人のご利用者様に対し、生活援助が得意な介護士が24時間傍につき、料理・洗濯・掃除といった家事をさせていただきながら、1日1回1時間看護師が入り、病状管理を主治医の指示のもと行い、1週間に1回理学療法士が歩行リハビリをおこなわせていただくといった具合です。
高齢者人口は「団塊の世代」が65歳以上となる今年、平成27年には約3,400万人となります。今後15年は高齢者人口が増え続けると言われている現状において、誰に支えてもらえるか、どこで最期を迎えるか、という切実な問題がますます出現してくると考えられています。
色々な選択肢がある中で、自宅で過ごしたいけれども介護力の問題のため自宅で過ごすことをあきらめてしまう人たちに対し、自宅で暮らせる仕組み作りに取り組んで行きたいと思っています。
今後も、多種のサービスをワンストップで提供できることを強みとして、よりご利用者様に寄り添い、満足度の高いサービスを提供できればと願っています。
--看護医療学部を選ばれたきっかけは?
正直な話としては、医学部に落ち、薬学部か看護医療学部かですごく悩みました。
悩んでいるときに、「保健・医療・福祉の分野において先導的役割を果たすための“看護学”を創出すること」という本学部の理念をホームページで読み、新しいことが学べ、チャレンジできそうな環境に身を置いてみたいと感じ、入学を決めました。
--どのような学生生活を送っていましたか?
1・2年生の頃は、SFC内にあるフリスビーを使った競技の「アルティメットサークル」で真っ黒になりながら、グラウンドを駆け回っていました。
試合中に骨折してしまったことをきっかけに、2年生の途中からは日本看護学生会(Japanese Nursing Students' Association)という、日本の看護学生が学生としての立場で看護について考え、社会に考えを発信していく学生団体に所属し、3年生では会長を務め、他の看護大の学生さんとの交流活動を積極的に行っていました。
今思えば、医療政策を広い視点で学びたいと思いSFCの他の学部の研究会に入れてもらったりして、とにかく気になることにすぐ手を出すような学生でした。
--現在の仕事とつながっている、学部時代の学びについて教えてください。
3年生から病院や施設での実習が始まるのですが、私の場合、終末期の実習がとても印象に残っています。
終末期の実習においては、実習先を自分で選べたのですが、私は「医療におけるサービス業とは?」ということを学びたいと思い、鹿児島にあるホスピスを選びました。
1か月ほど実習をさせていただいたのですが、そこでの経験が今の仕事へのパワーの源になっていると感じています。
- 患者様が主人公である医療
- いついかなる時も患者様が人間としての尊厳をもって生きられるようなサポート
- 痛みと孤独からの解放
- 人間的で温かく質の高い医療
上記を理念とされている実習先では、「病室に入るときはご自宅に入るのと同じ礼儀を払って入室すること」、「料理は、お一人おひとり、その方の好みに合わせ作り、その方の食器を使い、温かい状態で提供すること」などと、他ではやりたいけれどもやりきれていないサービスを徹底して行っており、終末期を迎える場所として私の中にあった少し殺伐とした怖いイメージと大きくかけ離れた、穏やかで温かな場所であったことに大きな感動を覚えました。
一方で、職員の方々の疲弊感は強く、バーンアウトされてしまう方も多いという課題を知り、想いだけでは成り立たない現実と、ありたい姿との溝を埋めるためにはどうしたらいいのか、ということに強い関心を持ちました。
その時感じた感動ともどかしさが忘れることができず、自分なりに挑戦したいと思い、今の会社を起業するに到ったのだと思っています。
--看護医療学部を志す後輩たちへメッセージをお願いします。
「意志なきとこに成果なし」
これは私が以前働いていた職場の上司に言われ続けた言葉です。本当にその通りだと思っています。
看護師になりたくて看護医療学部を志す方も、別の目標をもって入学される方も、本学部では本当に多岐に渡る経験をすることができます。
他学部生との交流、看護学以外の学問、海外への挑戦、様々な分野で活躍されている卒業生の講演、といった幅広い経験を通して、自分のやりたいこと、成し遂げたいことがだんだんと明確になってくることも多いと思います。
看護医療学部に入ったから看護師になる、もしくは、なれる、と思うのではなく、視野を広げる意欲を大事にし、そこに自分の確固たる意志があるからその道を選ぶ、という気持ちをもって、看護医療学部が持つ可能性に期待し、志していただければ卒業生としても嬉しいです。