今年は、戦後70年ということでさまざまな取り組みが行われています。
夏には、「慶應義塾と戦争Ⅲ―慶應義塾の昭和20年」展が三田キャンパスで開催されました。慶應義塾は、三田、四谷、日吉それぞれ5割から8割の校舎が焼失するという、全国でも最大の空爆被害を受けた大学と言われているそうです。展示されていたのは、20分間も艦砲射撃の砲声を聞き、地震のような振動を受けたという教員が書いた当直日誌や、三田の大講堂が無残に全焼した写真など、当時の様子が生々しく伝わってくるものばかりでした。白井名誉教授の調査によると慶應義塾関係戦没者は2200名を超え、学徒出陣により亡くなった方は385名もいらしたそうです。特攻出撃直前の手記もありました。また、集団で疎開していた幼稚舎生と家族との間で取り交わされた葉書も展示され、互いに心配掛けまいと、絵を添えて元気な様子を伝えあっているのには胸打たれました。大学病院は5月の空襲で焼失し、その時、職員の頑張りと学生も加わり、200名を超える入院患者を全員無事に救出したそうです。
このように、戦争という想像を絶する事態により、あまりに多くの取り返しのつかない犠牲を払ったということを、私たちは忘れてはならないと強く思いました。同時に、不屈の精神で困難を乗り越え復興を果たしてこられたことも知り、深く尊敬の念を抱きました。
SFCは25周年を迎え、創立時の果敢な精神を、その時代を知らない世代に生き生きと継承していくことが重要だと思います。2001年看護医療学部が開設された当時、SFC10周年で熱い議論がなされていたことを思い出します。
看護医療学部については、慶應義塾での看護教育の歴史が2018年には100年になり、学部20周年ももうすぐです。
時の節目で過去を振り返ることは大事なことです。なぜなら、これまでの歴史があったからこそ、いま私たちがここにいるからです。過去から連続してつながっているものもあれば、連続していないものもあります。それらを含めて歴史を学ぶことは自分が生きている土台を知ることになります。そうして、その土台に立ってこそ、これからの将来のあり方を展望することができるようになるのだと思います。
今年という節目に歴史を知り、将来のありようを考える機会としましょう。
(慶應義塾福沢研究センター「慶應義塾と戦争」アーカイブ・プロジェクトによる展示会冊子を参考にしています。)