2017年10月1日日曜日、学部長就任の初日、最初の仕事が、面接に来た受験生への挨拶でした。7月に次期学部長に選出されてから、少しずつ就任の準備を進めてきたとはいえ、どこかまだ実感のないままでいた私でしたが、緊張しきった受験生の前に立って、受験生の真剣なまなざしが自分に注がれるのを見たとき、学部長の重責をひしひしと体全体で感じました。
私は今までSFC心身ウェルネスセンター所長として、「心身ウェルネス」の講義を行い、保健管理センター・体育・学生相談のスタッフと協働して、キャンパス全体の健康問題に心を配ってきました。また学生生活委員や奨学金委員、ハラスメント防止委員として、多くの学生、教職員と接してきました。その中で、キャンパスには、身体的、精神的、あるいは社会・経済的にさまざまな困難をかかえながら、精一杯努力し、頑張って学習・研究・業務に励んでいる皆さんがいることを教えられてきました。精神科臨床医である私にとって、サポートしてきた学生がSFCで過ごす中で、自分のやりたいことを見つけ、一回り大きく成長し卒業を迎えること、あるいは苦労して卒業した学生が、SFCで学んだ多様な視点を生かして、社会の中で元気で働いていることを報告してくれることが、何よりの喜びです。
私は高校時代山岳部に所属し、山歩きを楽しんでいました。また医者になって最初に勤めたのも、青梅の山間の精神科病院でした。最近では忙しさと体力不足で山歩きからは遠ざかってしまいましたが、それでも山が大好きで、湘南台からSFCに近づくにつれて丹沢の山並みや富士山が大きく見えてくるとわくわくします。この広く緑の多いキャンパス環境、そして多様性が保証され尊重され、さまざまな分野の研究が活発に行われているキャンパスでは、物理的空間的にも、研究領域においても、さらには心理的にも、誰もが自分の居場所を見つけられると思います。一人一人が自分の個性・特性を生かし、やりたいことを実現できるキャンパス、その中で個性がぶつかり合って創造性が生まれるキャンパスをさらに充実させるために、与えられた任期の中で微力を尽くしたいと思っています。