今冬らしい暖かな土曜日の午後。銀座の時事通信ホールに250名を超える聴衆が集まった。この4月から正式にスタートする医療経済評価人材育成プログラムの設立を記念したフォーラム。テーマは「これからの医療技術と医療制度-費用対効果を考える」、いくつかの抗がん剤の登場による高額費用薬剤問題をキッカケに、社会的にも注目を集めるようになった大きな政策課題だ。
命に直結する医療というきわめて高い公共性、次々に起こってくる医薬・医療機器のイノベーション。一方で、すでに限界を越えている日本の財政。こんな状況において、どんな手法を使って評価をし、それに基づいてどう政策を展開していくのか?費用対効果という評価手法の妥当性という科学的・技術的論争から、日本が誇ってきた国民皆保険という制度を人口減の超高齢社会においてどうサステイナブルにモデルチェンジするのかという価値判断を伴う政策論争まで、多面的かつ多様な議論の必要性が提示された。
健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)の議論を経て、現場では健康格差問題の拡大が実感される。だからこそ、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」へと世界の保健医療政策は動いている。日本も例外ではない。2015年の市区町村別の男性の平均寿命は、もっとも長いと83.3歳、最も短いと73.5歳。このような状況で直面する資源配分の大問題。controversialな議論にこそ、大学の役割はある。
医療経済評価人材育成プログラムでは、健康マネジメント研究科委員を兼ねる経営管理研究科の後藤励さんをリーダーに、11科目20単位の履習による医療技術評価(Health Technology Assessment: HTA)のCertificateコースを健マネに設置するとともに、義塾横断的な「医療経済・医療技術評価研究センター」を立ち上げ、教育、研究、実践が一体となった活動を開始している。本プログラムは、すべての大学院生に開かれている。意欲ある皆さんの参加を楽しみに待っているところだ。
なお、このフォーラムの様子は、後日、公開予定。実に面白い議論が展開されたので、ぜひご覧いただきたい。