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2021.07.13

遺言(呪い)|総合政策学部教授/元常任理事・元総合政策学部長 國領 二郎

2009年に総合政策学部長になって以来、営々12年間書いてきたおかしら日記、もう終わりかと思ったら、もう一回書く機会をいただきました。

折角の機会なので、まず思い出話を書くことを考えてみたのですが、リーマンショック直後に学生の心が荒れて大変だったこと、前任から引き継いだ未来創造塾が大変だったこと(これについては近刊のSFCジャーナルの対談をご覧あれ)、東日本大震災後の緊張感、コロナ禍など、いろいろあるにはあるのですが、湿っぽくなってしまいそうです。

その替わりに、最後の影響力行使のために、何かこうすべしと遺言(呪い)をかける、なんてことを考えてみました。まず頭に浮かんだのは、東京の引力に負けがちなSFCの学生教職員の皆さんに高座郡遠藤村とのご縁を大切にして、地域とともに発展することを考えて欲しいという話でした。古代中世史が好きな方にとっては湿地帯(や海底)だった江戸なぞよりもはるかに開けていた相模国の都心エリアですし、今を生きる人にとっては、農村から工業までそろう解くべき課題の宝庫がすぐ周囲にあります。進んでいる街づくりへの参画も大切で、看護医療学部周辺(計画されている駅の直近)が、遊興施設ばかりが栄える湘南台駅前のようにならないように、知的な街にしていかなくてはならないです。でもこんなお説教を皆さんあんまり聞きたくないですよね。

ということで、最後の遺言(呪い)は「SFCは楽しくならねばならない」です。真面目なのはいいですけど、眉間に皺を寄せていたらイノベーションなんか起こりません。新しい技術や新しい社会制度をワクワクしながら試して、失敗しながら改良しながら社会に投入していくのです。僻地にあるSFCは普通のことをやっていたら生きていけません。ハリウッドやシリコンバレーがワシントンから遠いところにあるので、やんちゃが出来て栄えたように、他ではやれないこと、できないことをやれるキャンパスであり続けて欲しいです。どんな突飛な発想でも面白がって考えてみる文化を守って欲しいと思います。おかしらやっていると、突飛に始めたり、やんちゃにやらかしたりして下さったことの後始末をしないといけなくて、大変なのですが、私はもうそれをやらなくて良いので、思い切りそう言ってしまいます。

お迎えに応えて旅立つ前に、もう少しSFCにいて、このすばらしいキャンパスを楽しませていただこうと思っています。引き続きよろしくお願いします。

國領 二郎 総合政策学部教授/元慶應義塾常任理事・元総合政策学部長  教員プロフィール