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2021.08.31

全力で応援;推しのアスリート|看護医療学部長 武田 祐子

パラリンピックが開幕した。日本での開催では是非観戦・応援したいと願っていた推しの選手がいる。2004年アテネから連続5回目のパラリンピック出場、これまでに4個(金1、銀1、銅2)のメダルを獲得し、パラ競泳のキャプテンを務める鈴木孝幸選手である。

太い眉毛と意思のはっきりした瞳が印象的で、小さい時は金太郎さんのようなイメージであったが、34歳となり最近は髭を蓄えアラブの御曹司のような濃い(こゆい)面構えになっている。リオではメダルを逃しながらも、2018年アジアパラでは5個の金、2019年のロンドン世界選手権では銀4個、銅1個を獲得し、上り調子で2020年東京パラリンピックを迎える予定だった。そこに新型コロナ感染症の 世界的感染拡大となり延期。年齢的にもどのように維持できるのかと、余計な心配を他所に、拠点のイギリス・ニューカッスルでトレーニングに励み2021年選考会で条件を満たしての出場となった。

彼の一番の応援団は家族である。今年で87歳になる祖母と共に家族皆で海外遠征し、彼の応援に駆け付ける。2018年ジャカルタ開催のアジアパラでの快挙は、おばあちゃんの力強い応援の賜物(?)。ようやく日本開催と、どんなに楽しみにしていたかと思うが、今回はテレビ観戦である。そして、その家族の友人である私たちも大会ごとに盛り上がる第2応援団である。海外で行われるパラ競技はなかなかリアルタイムでのテレビ放映はなく、友人のSNS速報に一喜一憂する。その間はネット上の競技配信情報などがSNSで飛び交い盛り上がる。彼の泳ぎは圧巻である。水にスッと飛び込んだとたんにすごい推進力でスピードアップしていく。鍛え上げられた体幹の動きによるというテレビの解説があったが、確かに魚は手や足で泳いでいるわけではないとはいえ、四肢欠損を忘れさせる迫力とスピードの泳ぎに思わず引き込まれる。とにかくカッコイイ!!

友人宅では、年に1-2回、クリスマス会や花火鑑賞会が開催されてきた。大学時代の友人を中心にそれぞれの家族を含め、多い時には20人以上が集う。鈴木選手が参加した時には子どもたちが纏わりつき、車椅子を追いかけて走っていく光景が思い出される。彼はトップアスリートであり、とても魅力的な青年でもある。会える機会は多くはないが、彼と話していると、様々なことに興味を持ちながら自ら行動し、道を拓いていく人生への向き合い方や、家族への想いなどを感じることが多くある。今回のコロナ禍でも、足止めを食って拠点のイギリスに戻れない期間があったが、なんと「一五一会」という弦楽器にトライし見事に演奏するようになってしまった。大学時代からギターを演奏している夫が「こっちは40年以上やっているのに・・・」と嘆くほどの腕前である。

パラリンピックの開催にあたり、友人から「政府の無策ぶりに、私はオリパラ開催反対、でも選手は全力応援!という複雑なスタンスでいます。」というメールが届いた。そう、おそらく本人が一番複雑な気持ちなのかもしれない。ロシアのズダノフ、イスラエルのダダオン、イタリアのモレッリなどライバルたちも来日している中、全力で応援したい!! 

(8月25日SB3平泳ぎ50m、26日S4自由形100m、28日SM4個人メドレー150m、30日S4自由形200m、9月2日S4自由形50m 出場)

*この内容は8月24日時点で執筆されたものです。

武田 祐子 看護医療学部長/教授 教員プロフィール