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2021.11.16

菌とウィルスとSFC|環境情報学部長補佐/湘南藤沢ITC所長/環境情報学部教授 中澤 仁

今年の夏もSFCには、ここが大学のキャンパスとは思えないほどたくさんのキノコが生えました。学生の頃にSFCでキノコを見た記憶はありませんから、キャンパスが熟成してきたのでしょう。特に見栄えのするものは記念撮影していますので、その中から今年の代表選手をご紹介します。

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まず一番左はたぶんイボテングタケ、もしかしたらテングタケです。SFCではごくたまにベニテングタケも見ます。全員猛毒なので、そういう奴らと片付けておけばいいです。真ん中は、これはどう見てもキクラゲでしょう。でもわかりませんね。キクラゲに似た毒キノコでクロハナビラタケというのがあるようです。そして右端の、パンケーキのように甘そうなキノコが問題です。「イグチ」と総称される種類で、一昔前までは「イグチに毒なし」と言われていたそうですが、有毒種も見つかっているようですので要注意です。しかし!調べれば調べるほど、これが、イタリア料理に使われるあのキノコに思えて仕方ないのです。違うのかなぁ。私が専門とする情報学では、これ以上の真相は分かりませんでした。みなさん、これからもSFCでは、これってもしかして!?的な奴が生えてくるかもしれません。ですが、キノコを専門とする「名人」でもない限り、触ったり舐めたり、ましてや食べたりしてはいけません。

そろそろキノコも生えなくなった頃、新学期が近づいてきました。SFCでは、換気をしっかりして憂いなく対面授業を実施するために、主要な教室の二酸化炭素(CO2)濃度をリアルタイムにモニタリングしています。

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左端画像の左下の方でLEDが赤く光っているのはWi-Fi接続のCO2センサーで、中央画像のように値をWebページで常時確認できます。教室のCO2濃度が800ppmを超えると警備員さんが駆けつけて、ドアと窓の開放を確認する段取りになっています。この800ppmという基準は、環境情報学部の宮本先生と研究室の学生さんが計算してくれた値を参考にして、建築基準法の定める1,000ppmを、換気の点でより安全にしたものです。右端写真のように、まず液化炭酸ガスボンベと扇風機を使って教室内にCO2を拡散させます。そしてドアと窓を開けて、濃度が下がっていく様子をCO2センサーで計測すると、教室の換気量を求められるのです。この計測とリアルタイムモニタリングに協力してくださった宮本先生と宮本研の学生さん、そして横浜のグリーンブルー株式会社に、この場を借りて感謝します。キャンパスはこのような、地域にある知見も含めてよりよく成り立つのだ、と感じました。これから寒さが増すにつれ、ドア窓換気が躊躇われるところです。ですがおそらく、19世紀の慶應義塾では、隙間風の吹く日本家屋で議論を戦わせていたのでしょうから、私たちもその気になればなんとかできると信じます。

今のところ今学期は順調に進んでいるようです。一時期は1週間あたり数十名まで増加していた塾内のCOVID-19感染者数も、夏の終わりにはほぼゼロになりました。これを受けて、学生団体の対面による活動が申請により許可されるなど、私たちの活動が元に戻りつつあります。

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私は競走部長を務めております。つい先日は、日吉競技場で開催された「オール慶應陸上祭」に行ってまいりました。もちろん、私が走るわけではありません。大学競走部に加えて塾高と湘南藤沢高等部の競走部が日頃の練習成果を披露したこの日は、雲ひとつない快晴に恵まれ、素晴らしい競技会となりました。真裏で野球部の早慶戦が行われたため、スタジアムは閑散としていますが、ここではひとまず六大学野球での優勝をお祝いします。競走部には、SFCの学生がこれまでも含めてたくさん所属しています。その中の何人かはオリンピック・パラリンピックに出場して活躍してきました。少し前に行われた箱根駅伝予選会でも、年々ポジションをあげてきています。学生たちの活動がこうして再び活発になりつつあることは大変素晴らしいことで、心から応援するとともに、この状態が持続できることを祈ります。

キノコは、見えないところで文字通り地道に、しかし自由に菌糸を延ばして生き続け、時季が来るとニョキっと生えてきます。教育や研究、課外活動でも、日頃の活動の成果がキノコとなって次々に生え、そこから出てくる胞子が次の活動の種になっています。その成果が毒キノコな場合もありそうですが、ちなみに、テングタケは毒成分が旨味成分なのだそうです。徳田先生や村井先生がよくおっしゃっていた「辛いと旨いは意味同じ」というのと同じくらい、色々考えさせられます。

中澤 仁 環境情報学部長補佐/湘南藤沢ITC所長/環境情報学部教授 教員プロフィール