年明け早々、看護系学会等社会保険連合(看保連)の診療報酬体系等のあり方検討委員会が、58の看護系学会・団体参加により開催されました。看保連は、看護の診療報酬や介護報酬体系の評価の適正化を促進することを目的として、加盟学会・団体が連携した組織で様々な活動を行っています。主な活動は、厚生労働省への要望書・医療技術評価提案書の提出、情報交換会の開催、研究事業、講演活動等です。今回の会議は2025年度の診療報酬改定に向けて、看保連からどのような診療報酬への要望や技術提案が提出できるかを検討するものでした。
日本の医療は、国民皆保険という、全国民に加入が義務付けられている公的医療保険制度により、誰でも必要な診療行為やサービスを受けることができます。どのような医療サービスでもこの制度が適用されるのではなく、疾病構造の変化や医療技術の進歩に合わせてその適用が検討され、2年に1回改定が行われています。改定は厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議で議論されますが、審議対象とするために、関連団体が要望・提案書を提出します。その提出ルートとしては、日本医師会、外科系学会社会保険委員会連合、内科系学会社会保険連合(内保連)、看保連等があります。
看保連の会議では、臨床の現場で人々の健康を維持・促進するために奔走する看護職が工夫を凝らしながら実践する看護支援の効果を実感する中で、その普及のためには診療報酬体系に組み入れられる必要があるという考えのもとに、57の要望が提案されました。提案内容の対象は小児から高齢者、支援の場も救急外来や手術室、地域における在宅訪問など様々です。内容は、新たに導入された医療を効果的に運用するための患者指導であったり、安全安楽を提供する専門的ケアであったり、より専門的看護を提供する教育を受けた看護師に対する加算要求や、特殊な場における適切な医療チームや人員配置に対する要望であったりと千差万別です。いずれの提案も、どのような効果が期待できるのかを示す必要があり、提出を予定する学会等が中心となり調査や研究を重ねて臨みます。
私は日本遺伝看護学会の立場での参加でした。臨床では多くの遺伝/ゲノム情報が活用されるようになってきており、中でもがん医療においては、治療法の選択にこれらの情報が活用され、そのプロセスにおいて一部の遺伝性のがんの診断が明らかになるようになってきました。遺伝性のがんの場合、患者本人だけではなく、その血縁者も遺伝子の検査による診断がつけば、がんの早期発見・治療のための医療の活用が不可欠となります。しかし、現行では未発症者である血縁者に対する医療は保険の適応にはなっていません。そこで、そのような医療に対しても保険が適応拡大されるように要望の提出を準備しています。これは看護職が提供する支援ではありませんが、遺伝性のがん患者や家族と接する中で示される医療への期待に応えるものであり、看保連からだけではなく、遺伝医療やがん医療に関連する多くの医系学会が所属する内保連から提案される予定であり、連携により実現を目指すものであります。
日進月歩する医療の中で、何をどのように保険収載して国民の健康を守っていくことができるのか、限られた予算の中での配分は非常に難しいものではあります。日々患者と共に健康の回復、維持・増進を目指す看護の視点から、必要な看護・ケア、医療技術が広く普及されるための主張や活動を続けていきたいと思います。