もう1年半以上前になるが、2021年12月のおかしら日記で「30by30」について紹介した。そのおかしら日記で説明したが、「サーティ・バイ・サーティ」と読み、2030年までに地球の陸域と海域の30%以上を自然保護区として守ろうというものである。開催が遅れに遅れ、去年の12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議で正式に国際目標に採択された。この30by30の実現を目指し、環境省が2022年4月に発足させたのが、「生物多様性のための30by30アライアンス」である。30by30アライアンスと呼ばれることも多い。30by30を実現するロードマップに盛り込まれている各種施策を実効的に進めていくための有志連合である。環境省はじめ、21の団体がコアメンバーとなり、企業227団体、自治体37団体、NPO等132団体、個人47名が名乗りを上げている(2023年5月11日時点)。慶應義塾は、5月2日付で登録申請し、既に参加団体リストに掲載されている。
大学という観点では、既に8大学が加盟しており、私立大学としては国際基督教大学、京都産業大学、人間環境大学がある。私たちは先駆けて手を挙げたというわけではないが、小学校から大学院までを持つ学校法人という意味では最初の加盟団体となった。慶應義塾は、大学のキャンパスとしてSFCや日吉キャンパスのように緑あふれる環境を持っているが、志木高のように一貫教育校の敷地にも自然環境を有する。そして内部でもあまり知られていないことであるが、慶應義塾は慶應の森と呼んでいる学校林を日本各地に所有している。土地を所有している場合もあれば、分収契約であったり、塾員の所有林を利用させていただいていたりと様々な形態があるが、その面積は約162haにも上る。そのうち約4割を占めるのが、宮城県南三陸町に位置する志津川山林である。東日本大震災をきっかけに2011年から慶應義塾・南三陸プロジェクトが取り組まれてきた。2019年に活動が休止したが、2023年度からはみなさんmiraiプロジェクトとして再起動する。
30by30アライアンスは、加盟団体が30by30の実現に貢献することを求めている。慶應義塾としては、これまでもキャンパスをはじめとした所有地において自然環境を維持してきたが、これからは生物多様性モニタリングを行い、エビデンスに基づいた自然保護を実践する。加えて、それぞれの部局における教育研究は保護地域の拡大や有効な保護の推進を支援できる。これらの活動は、昨年12月のおかしら日記で紹介したネイチャーポジティブの実現に大きく貢献するものになるだろう。