毎年夏に慶應義塾の常任理事会は「集中常任理事会」という3日間の会議を行う。塾長と常任理事がそれぞれの担当分野の課題について情報共有を行い、大きな指針を検討する。一つのテーマについて20分から50分程度をかけて議論する。時には予定時間を超えて議論が続くこともある。
今年の集中常任理事会の3日目のことだった。ちょうど昼休みの時間、高校野球の神奈川大会決勝で慶應義塾高校が決勝戦を戦っていた。昼食が始まった時点では8回の表で、一貫教育校担当の山内慶太理事がノートパソコンに中継を映し出していた。塾高はその時点では3対5で横浜高校にリードを許していた。
私は昼休みのうちにやっておきたいことがあったので、昼食会場を早めに抜け出した。そして、東館6階のGラボの集中常任理事会の会場に戻ったところ、大画面に中継が映し出されていた。なんと私が見ていなかった間に塾高は3ランホームランで逆転していた。
午後の会議の開始間近になって塾長や他の常任理事たちもGラボに戻ってきた。しばし、自席に座ってみんな画面に集中する。13時になり、会議再開の時間になったと総務部長がアナウンスする。塾長は「午後の最初のアジェンダは塾高」と宣言。中継をみんなで見続けた。そして13時01分に横浜高校の最後のバッターがショートフライに打ち取られた。我々は「おおー!」と声を上げて喜んだ。義塾全体のたくさんの課題について眉間にしわをつくりながら議論している最中にうれしいニュースだった。
伊藤塾長の下での集中常任理事会は3回目である。私たち常任理事もそれぞれの所掌分野について理解が深まり、課題解決の難しさも実感しつつある。新型コロナウイルスのワクチン職域接種から始まった伊藤塾長の任期も半分を過ぎた。ずいぶん長い時間が経った気もするが、残された時間を考えるとのんびりはしていられない。