2023年10月1日看護医療学部長に就任しました。新しい役割につくと、これまで何となく考えていたことが意識化されてくるものですね。このところ、看護医療学部とはどのような学部なのか、慶應に看護医療学部があることの存在意義は何か、ということを考えています。人口構造や疾病構造、保健医療福祉システムが大きく変化し、保健医療のパラダイムシフトは急速に進んでいきます。私たち看護医療学部は、看護医療の未来を描き健康と福祉に貢献する先導者を育成すること、実践と研究を通して新たな知を創造すること、その成果を社会に発信し還元することに、さらに強力に取り組んでいく必要があります。
本学部の教育の柱である看護学は、人々が人生をその人らしく生き抜くことができるよう、命と健康を護り、日々の生活を支援することに関する知識体系であり、実践の科学です。看護の専門性をもって人々の幸福に資するためには、命を尊び、個々の価値観と尊厳を大切にする心、豊かな感性と人間性を磨き続けることが極めて重要です。その基盤があってこそ専門分野の知識や技術が活き、役に立ちます。さらに未来を見据えた変革力、国際力も大変重要です。そのため学部では人間・社会科学領域、看護科学領域、健康科学領域、統合領域からなる総合的カリキュラムのもと、理論と技を科学的に探求し教育しています。そして、2キャンパスで学べる贅沢な環境が学生の学びを後押ししています。以前おかしら日記で書きましたが、学生はSFCという個性と自由な発想が尊重され期待される場で大学生活をスタートします。既存のシステムにとらわれず、柔らかくそして深く思考し発想する力を養います。その後、信濃町にキャンパスを移し、より専門的で先進的な医療を学びます。様々な場で活躍する卒業生が、今をそして未来を担っていることの頼もしさ。本人たちの力の成せる技ではありますが、本学部教育もその一端を担っているのではないかと思うのです。
看護医療学部で展開する教育ーすなわち、命を尊び、多様な生き方や価値観を大切にし、豊かな感性と人間性そして確かな専門性を身につけることーは、義塾の先導者育成の理念に沿う重要な教育だと思います。ですから本学部の科目を他学部生の皆さんが基礎系科目として履修できるようになったらいいな、それって他の総合大学ではやっていないんじゃないかな、というようなことを考えつつ学部長の仕事をスタートしました。これから宜しくお願いいたします。
野末 聖香 看護医療学部長/教授 教員プロフィール