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2024.02.06

総合政策学と潜水艦|政策・メディア研究科委員長 高汐 一紀

一ノ瀬さんも触れていたが、2024年は地震と飛行機事故というショッキングなニュースとともに明けた。

おかしら日記でも度々触れていたように、私自身、この3年ほどで山陰地方との繋がりが深くなり、知り合いも増えた。今回の地震では、私の住んでいる地域も随分と長い時間揺れたので、只事ではない状況を否応なしに認識させられた。震源地と規模が明らかになり大津波警報が出てすぐ、SlackやSNSで状況の確認と共有。知人に大きな被害はなくホッとするも、時間が経つごとに能登方面での被害状況が伝わってきて、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震等の記憶がフラッシュバックしてしまった。少し不安定になったので、元旦はテレビの前から離れて過ごした。

キャンパスでは、いち早く学生と教職員の安否確認に動く。本件は、加茂さんと事務の皆さんが迅速に動いてくださった。その中で、在学生の安否確認システムは塾で動いているものの、教職員には対応していない事が判明。SFCは独自の方法で情報収集に努めた。加茂さんの陣頭指揮に感謝。

重ねてではあるが、被災された皆さま、事故で被害に遭われた皆さまに、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い復興を願う。

さて、今回の内容だが、先週の日記で一ノ瀬さんが「環境情報学」の授業に触れていたので、便乗しようと思う。

「あなたの名前、海上自衛隊の艦(フネ)と同じだよね?」

SFC の専任教員になって初めて(たぶん)の某業務の際、隣に座った阿川先生の第一声がこれだった。

私は艦が好きだ。こどもの名前にも「航」の字を入れた。世界を航って歴史を創ってほしいという願いを込めた(読んでいるか、息子氏?)。阿川先生の艦(船)好きも有名だ。海上自衛隊の熱烈なファンでもある。専門書も数多く出版されているが、ご自身の船旅の記憶を生々しくまとめた「北極星号航海記」は、私がたまらなく好きな本の一冊だ。電子化もされているので、是非手に取って読んでみてほしい。阿川先生は、上記のやりとりの後しばらくして、総合政策学部長に就任される。

「はい、『たかしお』という名前の潜水艦があります!」

上記の問いに対して私はこう答えた。そこから阿川先生とのかかわりが始まる。観艦式や総火演、降下訓練始め等々、海陸問わず様々な自衛隊のイベントでご一緒した。文字通り家族ぐるみのお付き合いが始まったのだけど、その辺はまた機会があれば改めて。未来構想キャンプを企画するきっかけをくれたのも阿川先生だ。三田での会議の合間の休憩時間、阿川先生から「義塾創立150年記念事業でSFCに滞在施設(現Ηヴィレッジ)を造る話があるのだけど..」と耳打ちされ、「じゃぁ高校生集めてSFCの本質を知ってもらう体験キャンプやりませんか?」と答えたのが始まりだ。

それからしばらくしたある日、キャンパス(たしか本館裏)で阿川先生に呼び止められた。

「潜水艦『たかしお』の盾をもらったんだけどいる?」
「まじですか、是非!!!」
「何をやってくれる?!」
...
「何でも(ふんすっ」

盾を譲っていただくお礼として引き受けたのが、「総合政策学の創造」(現、総合政策学)という講義の担当だった。知っての通り、私は環境情報学部の教員だ。環境情報学部の教員が総合政策学の創造(総合政策学)を共担したのは、私が最初で最後ではないだろうか。

これが実に刺激的な体験だった。もちろん阿川先生のキャラに寄るところも大きい。前半は「総合政策学とは?」という大きな問いに関連して、学部長ご本人が様々な課題を出し、入学式直後でのんびりしている新入生の頭を叩き起こす。続いて、総環問わず多くの教員に登壇してもらい、パネル形式でSFCがどこに向かっているのかを、新入生とともに密に議論した。同じく共担となった清水(唯)先生がこの年から導入した、政策コーカスの時間も楽しかった。これをきっかけに、総合政策学部の先生方との交流も増えた。ORFで安全保障のセッションに呼んでもらい、技術屋の視点から将来予想される戦場の様子に関してコメントさせてもらうこともあった。そこでお話ししたことは、いままさに現実のこととなっている。

いまも、総合政策学と環境情報学の両講義は、その時々の学部長(いまは加茂さんと一ノ瀬さん)が苦労して内容を練り、一連の講義に落とし込んでいる。そんな中で、環境情報学部のイチ教員が、総合政策学部のコアとも言える講義に深く参画させてもらうことができたのも、SFCのカルチャなのだろう。私がかかわった時間はそれほど長くはないが、このときのこの講義の色づけに多少なりとも貢献できたとしたら、とても嬉しいことだ。

P.S. この原稿を書き始めた週末から急に咳と発熱が酷くなり、まとめるのに時間がかかってしまいました。いまでも頭が朦朧としているので、推敲も十分ではなく、中途半端な終わり方になっているかもしれません。ごめんなさい。穴埋めはまたどこかで。


高汐 一紀 大学院政策・メディア研究科委員長/環境情報学部教授 教員プロフィール