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2024.03.05

フィールドワークと社中協力|総合政策学部長補佐 宮垣 元

キャンパスは春休みだ。この空間に人の気配はあまりないが、教職員は"学期末のもろもろ"や会議、入試などがあり、むしろ多忙を極める季節でもある(みなさま、お疲れさまです)。学生や院生も、色々と活動している様子で、研究活動の相談などもわりとある。とくにSFCの場合、キャンパスの外で研究活動をすることが珍しくないので、フィールドワーク先などでいろいろなことが展開されている。

フィールドワークといえば、移動にしても滞在にしてもコストがかかるものだが、本欄で加茂さんも紹介されていたとおり、SFCには学部学生向けの研究助成がある。いずれも研究活動の幅も深さも広げてくれる有り難い制度で、さまざまなご寄付で成り立っている助成も少なくない。

ここでは、そのひとつ、SFC政策研究支援機構のフィールドワーク助成のことを紹介したい。

機構という名称から、ずいぶん堅苦しい組織のイメージがあるが、そのメンバーは慶應義塾の塾員(卒業生)の皆さんだ。設立は1999年。当時、年金受給世代となった三田の塾員(1956年卒)の皆さんが、「後輩のため、皆で年金一ヶ月分を出し合おう」との声かけが設立のきっかけだったと聞く。ここで言う後輩とはSFCの現役学生のこと。つまり、この組織は、三田の先輩が、後輩にあたるSFCの現役学生の活動を支援するためだけに設立されたもので、この助成金は、個々人が身銭をきった寄付の集合体として始まっている。

当時のお名前を見ると、浅利慶太氏、小林公平氏、小坂憲次氏、小林陽太郎氏、服部礼次郎氏など、いろいろな立場や業界からの参加があることがわかる。なかでも、英正道氏、小島昌義氏、平井俊邦氏、岡田康氏、佐藤武男氏をはじめ、多くの方々が手弁当で推進してこられた。教職員側も、いまは縁あって私が窓口になっているが、学部長をはじめ、多くの教員がバトンをつないできた。コロナ禍で中断を余儀なくされたが、なんとか再開することができたのには、事務室の力も大きい。慶應義塾には社中協力という言葉があるが、つまりこういうことを言うのだろう。

どんな助成金もそうだが、申請をして、採択の審査があって、成果報告がある。機構でも、採択時と中間と最終の年3回の発表の機会にメンバーの皆さんが集まって、学生にいろいろな質問をする。厳しいものもあるが、年の離れた若い学生を応援しようという趣旨から、質問だけでなくアドバイスや提案などに及ぶこともある。なかには、何年にもわたって離島でのプロジェクトを支援したケースや、沖縄での調査計画に対して多くの関係者を紹介され、それを縁に豊かなインタビューになったケースもある。かといって、「ご高説」を押しつける感じでないのがいいバランスに映る。むしろ、機構の皆さんの方にも学生から得られる刺激や学びもあるようで、世代間交流のような、半学半教の場でもある。こうした相互作用が「応援しよう」と次の支援につながっているわけで、期待に応える学生の活躍があってこそのものだ。

フィールドに出かけるには、さまざまな局面で多くの支えがある。フィールドでの直接の関わりはもちろんだが、その背中を押す研究助成もそのひとつだ。協力の範囲が慶應のなかだけに閉じてはいけないのだけれど、自分の研究活動を応援している人がたしかに存在していることは心強い。そういえば、昨年の「未来構想キャンプ」でお邪魔した長崎でも、長崎三田会の皆さんのお力添えを得たのだった。見渡してみると、身の回りはこうした支えばかりだ。

SFC政策研究支援機構は、今年25年を迎える。この四半世紀、三田の先輩方が声を掛け合って、ずっとSFCの学生の研究活動を支えて下さったことの意味は大きいと思う。建物も銘板も残らないが(所得控除はありますよ)、確実に人は残っている。そして最近では、機構のメンバーのなかにSFC卒業生や元教員の顔も見られるようになってきた。かつて助成を受けた学生が、会に参加してくれたこともある。意気に感じる卒業生の皆さんが、これからもひとりひとり加わってくださればと願う。

研究助成・研究活動支援

宮垣 元 総合政策学部長補佐/総合政策学部教授 教員プロフィール