空と風、音が秋の気配を伝えている。夏休みがまもなく閉じる。キャンパスは、気力と体力を充実させて、秋学期を迎える。
夏休みのあいだ、学部長の仕事の一つが学部説明である。今年も、一貫校(慶應義塾高等学校、女子高等学校、志木高等学校、湘南藤沢高等部)で、それぞれ学部説明会に立った。8月中旬には大阪シティーキャンパスで開催された学部説明会で話しをした。また7月末から8月上旬にかけて未来構想キャンプの機会をとらえて、学部の説明をした。これらの説明会で必ず伝えてきたことは、総合政策学部と環境情報学部が、領域横断的で、学際的な教育研究を追究してきた目的と、実現したい教育研究である。
これまで3年のあいだ、学部長として出席した、これらの説明会をつうじて再認識したことが二つある。一つには、「問題発見と問題解決」、「領域横断的、学際的な教育研究」、「実践知」という、総合政策学部と環境情報学部が、1990年の学部創設以来、一貫して掲げてきた理念は、多くの教育研究機関で共有され、社会に浸透している、ということである。説明会に参加する高校生徒たちは、これらの言葉を駆使して、自らの思いを語る。私たちの教育研究活動への肯定的な評価ととらえて良いだろう。いま一つには、そうであるがゆえに、学部が創り上げてきた総合政策学の新しい発展の方向性を示すことが今求められている、ということである。
私たちは何を教育し、研究しなければならないのか。この問いの答えは、学部の同僚とともに共通認識を積み上げて、示してゆく必要がある。もちろん、これまで私たちは、そうした試みを繰り返してきた。いまから20年前の学部創設10年を期に刊行されたブックシリーズ「総合政策学の最先端」は、学部創設から10年を経た2000年頃に学部の同僚が考えた、総合政策学をかたちづくる学問の束を示しているといってよい。そして2023年春に刊行されたブックシリーズ「総合政策学をひらく」の各巻の研究領域は、現在の学問の束を示している。学部長としてブックシリーズ「総合政策学をひらく」を立ち上げた目的は、「領域横断的、学際的な教育研究」を展開している総合政策学部の学問を構造化し、立体的に可視化することにあった。そうしなければ、一体私たちは何を教育し、研究をしているのか、社会に伝わらないのではないか、という心配があった。「領域横断的、学際的な教育研究」を掲げる学部の弱みを克服したかった。
領域横断的で学際的な教育研究を展開する総合政策学部や環境情報学部の強みは、現在、そして未来の社会が解決を求める政策課題を素早くとらえ、その課題克服のための教育と研究のチームを組織できることにあるといってよい。学部に所属する教員の専門性、そして教育と研究を繋げるハブのような役割を担うものが政策課題なのである。
もし、総合政策学部と環境情報学部の教育研究の発展の方向性を理解したいのであれば、複数の教員がチームを作って教育研究を展開している政策課題に注目をすると良いのかもしれない。総合政策学部や環境情報学部、そしてSFCが、未来を担う学生達に、何を教育し、共に何を研究しなければならないと考えているのかが見えてくる。
この秋にも万学博覧会が開催される。秋以降にもいくつかの教員のチームによる研究成果が書籍として発信される。そこで示される教育研究の姿に注目して欲しい。