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2024.12.10

共生、ということ|看護医療学部長 野末 聖香

世界各地で続く民族間紛争は、終息の兆しが見えないまま長期化しています。民族的、宗教的、政治的な隔たりと対立の根はあまりに深く、多くの犠牲者が出たことを伝える報道がなされるたびに、世界中が途方に暮れます。いつか解決の道が開けるのでしょうか。

来年2月に開催する短期留学受け入れプログラムに、藤屋リカ先生のコーディネートでパレスチナのビルゼイト大学から3名の看護学生が参加します。看護医療学部生と5カ国8大学の学生たちがともに紛争地での看護、健康格差の課題等について学び、考え、ディスカッションする予定です。彼らは何を思い、語り、考えるでしょうか。

人は多様です。民族や言葉が同じであっても、ものの見方や考え方は一人ひとり異なります。多様な人間が社会を構成している以上、紛争とまでいかなくても、日常的に揉め事が生じますし、人間関係で葛藤を感じることもしばしばあります。自分とは異なる文化や考え方を持つ相手、理解が難しいと感じる相手に対しては、安心感を持ちづらく、距離を置いたり、どうせ分かり合えないと決めつけたり、相手の方が間違っていると思い込んだりしがちです。しかしそうではなく、互いの違いを認め、理解しようとし、受け入れ合うことで共生の道は開かれます。包摂性を醸成するためには、人は一人ひとり異なる存在であることを前提に、自分の気持ちや考えを伝え、相手のそれを理解し、協力したり妥協したりして、歩み寄ることが必要でしょう。大変だったり、不安になったり、面倒に感じたりするかもしれませんが、その努力のプロセスの中でこそ相互理解と相互受容は深まっていくのだと思います。

12月4日のシン・アゴラ#35「キャンパス・カントリー」で、SFCと周辺地域のまちづくりプロジェクトの発表がありました。研究者、学生、地域住民、行政、産業など様々な立場の方々がそれぞれの強みを活かし、協力して諸プロジェクトに取り組んでおられることに感動しました。サステナブルキャンパスプロジェクト(リーダーは一ノ瀬先生)のひとつとして、看護医療学部の石川志麻先生がエコキャップ活動―障害を持つ方々とペットボトルのキャップを収集しエコに貢献する活動―について報告されました。一緒に活動している学生達が、障害のある方々は自分と違う特別な存在ではなく共通のところがあることを発見したと語ったそうです。同じ目的を持って一緒に活動し、困ったり喜び合ったりしたからこその気づきではないかと思いました。多様な人々が交わり目的を持って協働することで、あると思っていた心の壁がいつしか消え、支え合いや学び合いが生まれる。共生はこのようにしてもたらされるのではないか、と思います。他にも様々なワクワクする活動が展開されていて、共生社会の実現を夢見ることのできる素敵なご報告ばかりでした。ありがとうございました。


野末 聖香 看護医療学部長/教授 教員プロフィール