4月も半ばを過ぎました。新入生にとって大学は自分の居場所になってきているでしょうか。いろいろと戸惑うこともあると思いますが、生活を整えつつ、ゆっくり大学生活をスタートしてください。大学時代は、様々な学びや経験を通して自分らしさを形づくる大事な時期。物事を鵜呑みにせず、常に疑問を持ち、確かめ、他者と議論し、考え抜く経験を重ねてほしいと思います。
さて、ほしい、と呼びかける以上、私たち教員はそれを可能にする場や状況をつくる応援団、として気合いを入れねばなりません。気合いが必要な場のひとつに学外での実習があります。実習では「今が学びをぐっと深めるチャンス」と思われる局面がしばしば生じるのですが、チャンスメイクがなかなか難しく頭を抱えることもあります。例えば、学生が実習中に現場で行われているケアに疑問や批判を抱いたとき。以前、学生たちが、ある施設スタッフの言動は患者さんの尊厳を傷つける関わりではなかったか、という疑問を抱きました。このようなとき教員はどうするか。学生間で議論したり指導担当に意見を聞いたりはするでしょう。しかしその場のスタッフたちの関わりの意図は確認してみなければ分からないものです。ただ、学生が現場のケアに物申す、という状況はなかなかに緊張感を伴うものです。教員としては「スタッフが気分を害し学生の意見を受け止めてもらえないのでは」はたまた「来年の実習受け入れが難しくなるのでは」などの不安が頭をよぎります。しかし気合いを入れて、学生たちの疑問を管理者に伝え、スタッフと話し合う機会をアレンジしました(最初は断られました。現場で+αの時間を作ることは至難の業です)。話し合いの当初はギクシャクしましたが、学生が自分たちの疑問を冷静に丁寧に投げかけ考えを伝えると、現場の方々が関わりの意図を話してくださり、学生が投げかけた疑問を受け止め、真摯に考えてくださいました。そして学生のおかげで倫理的課題に気づけたとも言ってくださいました。さすがケアの専門家だと思いましたし、同時に学生たちの現場を変える力に感動を覚えました。
学生は、現場での問題提起や議論の体験を積むことで、ケアの内容を学ぶだけでなく、自分の考えや感じたことを相手に率直に、その場の状況にあった適切な方法で伝える、すなわちアサーティブなコミュニケーションの力を身につけることができるように思います。アサーションの力は、価値観が多様化した現代社会の中で、様々な文化的背景や考え方を持つ人々と相互理解を深め、お互いを尊重することにおいて、また葛藤状況下で交渉し、歩み寄り、解決策を見出すことにおいて必須の力です。学生たちがそういった力をメキメキと身につけていくプロセスを共にできる喜びは教員の特権です。新年度にあたり気合を入れ直し、チャンスメイクを怠らず、半学半教を満喫したいと思います。
最後になりますが、2025年度は看護医療学部開設25年目です。これまでの25年を振り返り、これからを展望する年になります。その意味でも一層気合いを入れてこの学期をスタートしたいと思います。